第2回 男女性

01白のパンタロンと上着を着たシャネルとリュシアン・ルロン
ヴェニス 1931
エドモンド・シャルル・ルー『シャネルの
生涯とその時代』
鎌倉書房1990より

社会に出て建築の設計を始めて数年すると、周りの人の描いている図面が気になり始める。一体自分の描いているものはなんぼのものだと思うようになる。そして先輩同輩の図面をしげしげと眺めると、それぞれにデザインの癖のようなものがあることに気付く。

そのなかでも曲線を使うか使わないかというあたりはひとつの分かれ目のように感じた。現在のようにcadが普及しているとさほど感じないが、手描きだったそのころは、曲線を使うのは図面技術の問題からも、数値をうまく整えていく上でもなかなか難しいことだった。だからそれができる人はデザインができる人のように言われた。そして曲線=優美という一つの美的価値を獲得していたように思う。

ライトが曲線を多用したジョンソンワックスビルを女性的と呼んだそうだが、優美が建築の価値となるのと女性の社会進出とは無関係ではない。それまでの男性社会では建築は男性的であることがよしとされていたのだから。

目次

1.西洋建築にみる男女性の系譜

 1.1 セルリオの二項対立に見る男女
 1.2 ウォットンのオーダー分析
 1.3 建築は男性性優位の産物だった(J=F・ブロンデル)
 1.4 女性性と言われる形容詞が評価されるようになったのは最近のこと

2.日本文化に見る男女性の系譜

 2.1 縄文・弥生
 2.2 松岡正剛、真壁智治、四方田犬彦の女性性評価軸

3.性がつくる建築(1)西洋編

 3.1 古代、中世
 3.2 近世、近代
 3.3 現代

4.性が作る建築(2)日本編

 4.1 戦前
 4.2 戦後

参考文献

  1. 藤岡通夫 1971 『近世の建築』 中央公論美術出版
  2. 平井聖 1980 『図説日本住宅の歴史』 学芸出版社
  3. 内田青蔵+大川三雄+藤谷陽悦 2001 『図説・近代日本住宅史』 鹿島出版会
  4. エイドリアン・フォティー 坂牛卓 辺見浩久監訳 2006 『言葉と建築』、鹿島出版会
  5. 松岡正剛 1995 『フラジャイル』 筑摩書房
  6. 四方田犬彦 2006 『かわいい論』 筑摩新書
  7. エドモンド・シャルル・ルー 秦 早穂子 1990 『シャネルの生涯とその時代』 鎌倉書房