ジャン・ペロー『エッフェル塔の前で』
成実弘至編『モードと身体』
角川書店2003より
建築界には「豪邸問題」と言う言葉がある。「豪華」な住宅が必ずしもいい建築作品にはならないという事柄を意味する。潤沢な資金のもとに作られる豪華な家は一見素晴らしい建築作品になると思われがちである。しかし、なかなかそうもいかない。そうした潤沢な資金を持つクライアントが抱く豪華さを象徴するデザインのステレオタイプが建築家の創造性と齟齬をきたすのである。つまり建築の創作を困難なものにしてしまうのである。その昔、様式の使い方とその修辞が建築家の技だったときはまだしも、現在こうした類型化した技法を当てはめても創作にはならない。
しかし昨今のクライアントは徐々にそうした類型化した豪華さが所謂「成金」という記号になることを知り始めた。それを恥と思うようになってきている。かれらもかなり勉強をしている。その中で彼等は記号を求めなくなり、徐々に本当の意味での生活のクオリティを欲している。それは階級を忌避し、格差を見せず、個別性を望むことのようである。
目次
1.階級の反映
1.1 建築
1.2 ファション
2.階級瓦解の契機
2.1 近代社会の成立
2.2 大衆消費社会の誕生
3.ファッションにおける平準化
3.1 格差の反映からユニバーサルへ
3.2 オートクチュール⇒プレタポルテ
4.建築における平準化
4.1 最小限住宅
4.2 近代日本における階級表現の衰退
4.3 大量消費社会の商品化住宅
5.文化・芸術における平準化
5.1 ミニマリズム
5.2 アルテ・ポーヴェラ
5.3 スーパーフラット
6.格差の表れ
6.1 グローバルブランド
6.2 普通の個性
7.まとめ
《参考文献》
- ヴェブレン、1961『有閑階級の理論』(小原和敬士訳)、岩波文庫
- ディヤン・スジック、2007、『巨大建築という欲望』 紀伊国屋書店
- 塚本由晴+西沢大良、2004、『現代住宅研究』、INAX出版
- 2005、『10+1 No.41 実験住宅』、INAX出版
- 2002、『10+1 No.28 現代住宅の条件』、INAX出版
- プロスペクター、2005、『現代住居コンセプション−117のキーワード』、INAX出版
- 西山卯三、1975、『日本のすまい』、勁草書房
- SD9703、『ミニマル・スペース・アーキテクチュア』
- ギャラリー・間、2001、『空間から状況へ』、TOTO出版
- 浅井克彦、2002、『10+1 建築的/アート的』、INAX出版
- 内山慧、『アルテ・ポーヴェラとグランジ・ファッションの反逆性』、2008,02,11取得
- 塚本由晴、2003、『小さな家の気づき』、王国社
- 柏木博、1998、『ファッションの20世紀』、日本放送出版協会
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