カテゴリー: 建築の規則 2017(前)
保護中: 建築の条件2
保護中: 建築の条件1
付2 建築はしゃべるか – meaning
トラピスト
ジャンヌーベルがTNプローブで篠原一男と対談した時、篠原はヌーベルの劇場壁面を見ながら装飾だと言って称揚した。今年の1月の新建築で伊東豊雄は装飾の力を強調した。二人の建築家が言う装飾とは何か?広辞苑では「美しくよそおいかざること。また、そのかざり、よそおい。かざりつけ。」であるが、二人の建築家の指すものはもう少し限定された意味である。 建築の世界で装飾というとき最初に無意識に引用されている文脈はアドルフ・ロースの『装飾と犯罪』である。そしてそれは当然のことながらネガティヴなことばなのである。またそれはモダニズムの本質の一つである抽象という概念の対立軸の逆側におかれたものとして語られる。その時この言葉には具象という意味合いが色濃く付着してくるのである。 つまり、ある部分を捨て、エッセンスだけを表そうとする態度に代わり、捨てることなく、全体を像を具えて表そうという態度が抽象の対語としての具象である。それはもう少し建築に引き寄せて語るなら、モダニズム期に抽象と言って捨象した様々なものをもう一度具えることに他ならない。 しかし注意すべきはそうした試みは建築のポストモダニズム期に(モダニズム期に捨象された)物語の復活として歴史様式を付加した建築が沢山作られるかたちで行われ、結局何も語りえず終わったと言う事実である。 当然ここで彼らが具えるべきとしている像はこうした失われた物語としての歴史様式ではなくもっと人間に本質的な像なのだと思う。そうした新たな像が人々に何かを語るということが今可能性を持ち始めているのである。その語る内容とは何か?そしてその語り口とは?
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付1 先天的と後天的 – intention
DNA
僕の友人は、とある大きな新聞の週末版を作っている。その週末版では、毎号1面、2面を「時の人」のために特集する。ある週、隈研吾という話題の建築家の紙面を作り、次の週に、イデーというインテリア会社の黒崎社長の特集を組んだ。隈研吾は表参道にファッションビルを作ったと言って、黒崎は古くなったビルを住宅に変えるプロジェクトを進行中ということで時の人となった。
友人曰く、両方とも時の人だけど、時代は黒崎だよと言う。黒崎が、このコンヴァージョンプロジェクトを打ち上げた時、手弁当で参加したいという学生が山のように集まったと友人はあたかも見てきたかのごとく僕に告げるのである。学生が集まるのは、新しい何かを創り出すより、古くなった何かをカスタマイズすることの方がおしゃれであるというファッションセンスに繋がるところがあるようだ。
しかし時代が黒崎であろうとも僕らは建築家で、産み落とす職業である。そんな職能を前提としていること自体を古臭いとは少し思うけれど、産み落とす人はなくならないというのも一方の真理であろう。しかし、この産み落とすというところが曲者で僕らは何を願ってこの子らを産み落とそうというのであろうか?
人はDNAと言う設計図を親からもらうと言われているけれど、この設計図がその後の自分をどこまで方向づけているのかは正確にはわからない。人は社会に順応してオトナになるというのだから、この設計図はどこかで順応という書き換え(或いは修正)を施さざるを得ない。一方建築とはどんなものだろうか?時代のニーズの変化の早い現代では、産み落とされた時点のリクエストと20年後では明らかに異なると思われる。順応という設計図の書き換えがやはりいるのだと思う。
そうした書き換えこそがオトナへの成長であり人間なら一回り大きくなったと言ってポジティヴに考えられるわけだ。建築もそうした書き換えが年輪を重ねるという如くその建物の厚みを増していくようなことになるのだろうか。そんな書き換えられることを前提とした設計図を僕らは書けるのだろうか?
I 計画の不可能性と可能性
1)後天的1(先天不可) passive uncontrollability —S.M.L.XLのニヒリズム 2)後天的2(計画的後天) positive uncontrollability —メタボリズムの限界 3)後天的3(フレキシビリティ) II 建築という種子(後天的4) 1)オフィス2003年問題 III コントロールできないことをコントロールしないという計画(後天的5)
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保護中: 第10 建築の規則 コメント
第10講 関係の規則 きのこと宇宙船 – site
近代は工学が発明された時代である。工学とはengineeringであり、もとをただせば、それはengine、つまり力を動きに変換する装置、平たく言えば乗り物の学であった。船舶、機械(自動車)、そしてその粋は宇宙船である。
しかし、動かないけれど、人間を包む乗り物(容器)としてどういうわけか日本では建築もこの工学の仲間に入れられてしまった。技術の粋としての願いがこめられたのである。しかし、建築は宇宙船にはなれないのである。地球を代表し宇宙に飛び出る宇宙船は地球技術の最先端を際限ない予算を背景に開発される。一方建築は先ずは何十億という人間の住む場、政治の場、経済の場として単なる技術の産物とはなりえないのである。
しかし、そんな状態に業を煮やす技術者が登場するのは当然と言えば当然だ。何故建築が、そんなローテクなわけ?戦後アメリカで突如不要になった軍需産業をもてあました行政の困惑と、技術指向の建築家の夢がアメリカンプラグマティズムに後押しされて次代の建築へ向けて合体した。フラー宇宙船建築の登場だった。技術の粋を集めたテクノ建築プロトタイプの登場である。
さて話は十数年の後日本に移る。民家研究をしていた篠原一男は「民家はきのこ」という有名はアフォリズムを発するとともに建築は敷地から、クライアントから、その他の様々な条件から自由であるべきだと語り、建築を芸術化した。篠原の目指したことは、アート建築プロトタイプの作成だった。
前者は技術を指向する意味でモダニズムであり、後者は建築を諸条件から切断しアート化するわけでその意味では近代合理主義に真っ向から離反する反モダニズムである。しかしその双方が建築の座るその「場」を条件として組み込む姿勢を見せないという意味で共通するところがあった。
これに対し、こうした敷地から切れた建築への反省が、コンテクスチャリズム、リージョナリズム、クリティカルリージョナリズム、という形で建築を思考するツールとになってきた。
建築は建築の外の世界とどうつながるジェスチャーを示せるのか、建築に問われている大きな問題なのだが、それは、外の世界の何とつながるのか、周辺の問題とは何なのかというテーマの選択へと話がずれ込んでいくのである。
I 宇宙船建築の系譜
1)グローバルアーキテクチャー II 所謂きのこ建築 1)建築家なしの建築 III 宇宙から飛来したきのこを目指して 1)法律 ガエハウス
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第9講 関係の規則 親父とお袋 – capacity
Miami Beach”
The Americans
僕の先生である篠原一男の住宅を故宮脇壇は「パジャマでは歩けない住宅」と表し、篠原の逆鱗に触れた。篠原の住宅は「芸術」であり、その空間にはその空間にしつらえられているもの意外の混入は許されない”exclusive”なものだった。「そんなの住宅じゃないでしょう」という捕らえ方もあろうかと思うし、「そんなところで生活できるの?」という疑問もあろうかと思うけれど、実際に篠原の住宅に行ってみると住人はきれいに、そしてきちんと「生活」しているのが分かる。それになにより確かに、この研ぎ澄まされた空間に邪魔なものはおきたくないという気になる。それほどその空間は美しいからだ。
さてこの美しさに今をときめく伊東豊雄や坂本一成は一時しびれていた。だから、彼らは師匠を超えるために様々な作戦を立てたが、やはり初期の作品はこうした”exclusive”な空間に引き寄せられていた。中野本町の家など僕は高校時代に今は廃刊となった「都市住宅」で見て、「これは果たして建築か?」と思いつつもその美しさに声が出なかった。本物を見せてもらった時はとにかく感動した。「これぞ建築だ」と思ったものだ。
さてしかし、そもそもこうした”exclusive”で頑固な建築、言ってみれば親父的な建築を作ることは彼ら若い(?)世代の建築家の本意ではなかったし、なんとかこの魔の美しさから逃れようとしたのである。僕は伊東豊雄のシルバーハットができたての頃、氏とお話をする機会があったが、「こんな格好悪いもの作っちゃった」と嘆いていたのを今でも鮮明に覚えている。規律正しく、厳格な親父建築から逃れ、しなやかで、やさしく、軽やかなオフクロ的建築をまだその頃の伊東は頭で作っていたということだ。
オフクロ建築とは、では、格好悪いのか? 格好悪いというより、どこにあるの、それ?という感じがオフクロ建築の妙だ。それこそ、一昔前のオフクロとは、親父の3歩後ろを空気のように寄り添って歩いていたのである。そうしたオフクロみたいな空気みたいな建築が本当にできたら、そんな建築はちょっと怖い。
I 親父建築の起源
II 元祖親父建築
−ミース・ファン・デル・ローエの均斉
III 親父建築は美しい
−篠原一男と形式性
a, 上原曲道の家
b, 白の家
c, 谷川さんの住宅
d, 篠さんの家
IV 親父建築2
−内向きな男建築
1)坂本一成の閉じた箱
a, 水無瀬の町家
b, 雲野流山の家
c, 計画 N
2)伊東豊雄の閉ざされた内部
−中野本町の家
V オフクロへの転進
−しなやかで包み込む建築
1)坂本一成の解放
a, project k
b, House SA
c, Hut T
2)伊東豊雄の風の変容体
a, シルバーハット
3)ミース・ファン・デル・ローエの均等
a, Crown Hall IIT
VI オフクロの行く末(強いオフクロ像)
1)ダーティーリアリズム
2)構造力
《参考文献》
[A]…講義の理解を深めるために是非一読を(入手も容易)。
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