第11回 グローバリゼーション

07ジョバンニ・ミケルッチ他 フィレンツェ サンタ・マリア・ノッベラ停車場 1934

大学院生の時学部3年の非常勤講師として原広司先生が来られスライドレクチャーを行なった。風土を大事にした建築を作るという原さんのマニフェストが学生にも分かりやすく語られていた。風土を大事にするとはどういうことだろうか? それは風土から何かを吸収することなのか? このとき見せてもらった原さんの作品は黒く塗られた下見張りの木造建築が多かった。確かにインターナショナルではないが、どれもが似たようなデザインだった。風土的ならそれぞれ風土に合わせて異なるのが自然では? と少々疑問も持った。

世界は一通りではないはずだが、では何通り作れば気が済むのだろうか? 場所ごとに全部違うということなのだろうか? 新宿と渋谷で違わなければいけない理由はあるのだろうか? あるとすればその基準はなになのだろうか?

目次

1.古代のグローバリズムと地域主義

 1.1 ローマの古典主義建築
 1.2 ウィトルウィウスの地域性

2.近代以降のグローバリズム

 2.1 産業革命以降の資本主義社会
 2.2 ネオリベラル・グローバリズム
 2.3 建築におけるグローバリズム

3.グローバリズムへの反動

 3.1 ナチスのバウハウス弾圧
 3.2 地域主義
 3.3 ゲニウス・ロキ

4.キッチュな地域主義への反動

 4.1 批判的地域主義
 4.2 ダーティリアリズム
 4.3 バイオリージョナリズム

5.ネオグローバリズムへの反動

 5.1 スロー文化
 5.2 リノベーション、コンバージョン

6.オリエンタリズムとそこからの脱皮

 6.1 安藤、磯崎の日本性
 6.2 初期コムデギャルソンの日本性
 6.3 グローバルスタンダードへの漸近

《参考文献》

  1. フィリップ・ジョンソン、ヘンリー ラッセル・ヒッチコック(Hitchcok、Henry-Russell、 Jhonson、 Philip)、1978(1932)『インターナショナル・スタイル』(武澤秀一訳)、鹿島出版会
  2. 和辻哲郎、1979、『風土 人間学的考察』、岩波文庫
  3. 岡田昌彰、2003、『テクノスケープ 同化と異化の景観論』、鹿島出版会
  4. 宮本佳明、2007、『環境ノイズを読み、風景をつくる。』、彰国社
  5. 安彦一恵、佐藤康邦編、2002、『風景の哲学』、ナカニシヤ出版
  6. 鈴木謙介、2007、『<反転>するグローバリゼーション』、NTT出版
  7. ノベルク・シュルツ(Norberg-Schulz)、1973、『実存・空間・建築』(加藤邦男訳)、鹿島出版会
  8. 「SLOW ARCHITECTURE」、Casa BRUTUS 2003 12、マガジンハウス
  9. 井上充夫、1991、『建築美論の歩み』、鹿島出版会
  10. 「SUSTAINABLE ARCHITECTURE」、新建築 2005 05臨時増刊、新建築社
  11. 妹島和世+西沢立衛/SANAA、『SANAA WORKS 1995-2003』、TOTO出版

第9回 階級性

06ジャン・ペロー『エッフェル塔の前で』
成実弘至編『モードと身体』
角川書店2003より

建築界には「豪邸問題」と言う言葉がある。「豪華」な住宅が必ずしもいい建築作品にはならないという事柄を意味する。潤沢な資金のもとに作られる豪華な家は一見素晴らしい建築作品になると思われがちである。しかし、なかなかそうもいかない。そうした潤沢な資金を持つクライアントが抱く豪華さを象徴するデザインのステレオタイプが建築家の創造性と齟齬をきたすのである。つまり建築の創作を困難なものにしてしまうのである。その昔、様式の使い方とその修辞が建築家の技だったときはまだしも、現在こうした類型化した技法を当てはめても創作にはならない。

しかし昨今のクライアントは徐々にそうした類型化した豪華さが所謂「成金」という記号になることを知り始めた。それを恥と思うようになってきている。かれらもかなり勉強をしている。その中で彼等は記号を求めなくなり、徐々に本当の意味での生活のクオリティを欲している。それは階級を忌避し、格差を見せず、個別性を望むことのようである。

目次

1.階級の反映

 1.1 建築
 1.2 ファション

2.階級瓦解の契機

 2.1 近代社会の成立
 2.2 大衆消費社会の誕生

3.ファッションにおける平準化

 3.1 格差の反映からユニバーサルへ
 3.2 オートクチュール⇒プレタポルテ

4.建築における平準化

 4.1 最小限住宅
 4.2 近代日本における階級表現の衰退
 4.3 大量消費社会の商品化住宅

5.文化・芸術における平準化

 5.1 ミニマリズム
 5.2 アルテ・ポーヴェラ
 5.3 スーパーフラット

6.格差の表れ

 6.1 グローバルブランド
 6.2 普通の個性

7.まとめ

《参考文献》

  1. ヴェブレン、1961『有閑階級の理論』(小原和敬士訳)、岩波文庫
  2. ディヤン・スジック、2007、『巨大建築という欲望』 紀伊国屋書店
  3. 塚本由晴+西沢大良、2004、『現代住宅研究』、INAX出版
  4. 2005、『10+1 No.41 実験住宅』、INAX出版
  5. 2002、『10+1 No.28 現代住宅の条件』、INAX出版
  6. プロスペクター、2005、『現代住居コンセプション−117のキーワード』、INAX出版
  7. 西山卯三、1975、『日本のすまい』、勁草書房
  8. SD9703、『ミニマル・スペース・アーキテクチュア』
  9. ギャラリー・間、2001、『空間から状況へ』、TOTO出版
  10. 浅井克彦、2002、『10+1 建築的/アート的』、INAX出版
  11. 内山慧、『アルテ・ポーヴェラとグランジ・ファッションの反逆性』、2008,02,11取得
  12. 塚本由晴、2003、『小さな家の気づき』、王国社
  13. 柏木博、1998、『ファッションの20世紀』、日本放送出版協会